
3日間、山の中へ隔離されていた。実習のために。
林業に使われている機械の操作手順を教えてもらったり、作業道(林道の一種。小型の林業機械が通れる程度の砂利道。木材を運び出すために、日本の林業では欠かせないもの)の設計に必要な地形データを測量したりした。初日はと中日を通して地形の測量を実践した。方位磁石と望遠鏡を合体させたような”コンパス”と呼ばれる機械を用いて、作業道を通す予定の径路をいくつかの点で区切り、その区切りごとの点にコンパスを置き、傾斜や距離を測っていった。
ここで難しいと感じたのは、その「コンパスを定位置に置く」こと。急な斜面、狭い足場、ぬかるむ斜面。悪条件可でコンパスのついた三脚を立てることは困難だった。どの程度三脚を広げ、また狭めればコンパスを定位置に設置できるのか。この調整がなかなかうまくいかない。てこずるぼくを見かねた先生は、三脚を手に取ると数秒で設置した。
正確な数値が求められる測量ではあるが、そこには慣れや経験といった感覚的な技術が必要だということを知った。あたり前のことだが、傾斜やぬかるみ、足場の範囲を掴む感覚は、それなりの経験を積まないと磨いていけるものではない。専門性のある仕事は、マニュアルを見ても簡単にまねできないものばかりなのだろうな。
実習を経験したからといって、実際に機械を扱えるようになったわけでもないし、しっかりとした測量技術が身についたわけでもない。実習はあくまで体験であって、訓練ではない。体験では、技術を身につけることは後回し。実際の作業の難しさやうまくできないもどかしさなどから垣間見れた、リアルな作業の感覚を、学びの土台にすることが大切なのだ。
ぼくの足の裏に残った、斜面やぬかるみを踏んでいるときの感覚は、林業の本質を語る素材のひとつになったと思う。